最近、採用市場が不安定で、今後の見通しが立たないんです。どうすればいいんでしょうか？
2023年の人材業界は確かに変化が激しいですね。リクルートやパーソルも業績に影響が出ていますが、特にテクノロジーの導入と市場のグローバル化が大きなポイントです。
うちもテクノロジーを取り入れて効率化した方がいいってことですか？
そうですね。特に応募者管理システムやAIを活用した採用プロセスの効率化が重要です。また、求人の質を上げて、適切な人材にアピールすることが求められています。
なるほど、単に求人を出すだけじゃなく、もっと戦略的に考えないといけないですね。
2023年度最新版：売上高から見た人材業界地図
2023年度も各社の通期決算が出揃い、人材業界の動向が明らかになりました。昨年度は多くの企業でコロナ禍からの回復が見られましたが、今年度はどのような変化があったのでしょうか？以下に主要企業の業績を詳述します。
総合サービス企業
HRog
リクルートホールディングス
リクルートホールディングスは、円安ドル高の影響で売上収益が19.4％増の3兆4,295億円となり、過去最高を記録しました。為替の影響を除いた売上高は前年比9.4％増でした。しかし、米国における採用意欲の平準化により、営業利益は前年から9.1%減の3,443億円に留まりました。同社はHRテクノロジー事業で人員削減を実施し、これに伴う解雇給付金で176億円の損失が発生しました。一方、国内では人材需要が堅調に回復し、求人広告・人材紹介・派遣の全ての分野で増収となりました。
パーソルホールディングス
パーソルホールディングスの売上高は前年比15.4％増の1兆2,240億円、営業利益は10.2％増の531億円となりました。特に「doda」などの人材紹介サービスが好調で、前年比113.8％の増益を達成しました。サービス業の需要が旺盛であったことが影響しています。同社はBPO（ビジネス・プロセス・アウトソーシング）サービスの需要の高まりを受け、2023年3月に「BPO SBU」を新設しました。
パソナグループ
パソナグループは、医療関連の人材派遣の特需が減少し、前年比34.9％の減益となりました。事業拡大に伴う販管費の増加も影響しています。しかし、BPOやアウトソーシング事業は好調で、公務員共済組合の非常勤職員の加入が拡大しました。
求人媒体企業
クイック
クイックは採用ニーズの回復により、2年連続で売上・営業利益ともに過去最高を更新しました。
キャリアデザインセンター
「Type」を運営するキャリアデザインセンターは、新規開拓で取引社数を増加させ、過去最高の売上・営業利益を記録しました。
クックビズ
飲食業界の有効求人倍率が回復し、クックビズは2019年以来の黒字化を達成しました。
エンジャパン
エンジャパンは採用支援ツール「engage」の売上が順調に伸び、広宣費の追加投資を実施しました。
i-plug
i-plugは「OfferBox」に加え、新規事業「PaceBox」に積極投資しましたが、リリース遅延等により赤字幅が拡大しました。
トライト
トライトは医療・福祉分野に特化した人材サービスを運営し、2023年7月に東証グロースに上場しました。
人材派遣サービス企業
UTグループ・アルプス技研
技術者派遣で過去最高売上を更新しました。2023年7月には建設業向けの技術者派遣を手掛けるナレルグループが東証グロースに上場しました。
nmsホールディングス
製造業の派遣が順調に回復し、売上高・利益ともに前年比で大幅に改善しました。
クリーク・アンド・リバー社
クリーク・アンド・リバー社は新規事業への積極投資と既存事業の成長で、営業利益40億円を達成しました。
採用担当者向け情報
- リクルートホールディングスの事例
- 為替の影響を受けることがあるため、グローバル市場での動向も注意が必要。
- 採用意欲が平準化する可能性があるため、長期的な採用戦略の見直しが重要。
- 国内では求人広告・人材紹介・派遣の需要が堅調に推移しているため、各分野への投資が有効。
- パーソルホールディングスの事例
- 「doda」などの人材紹介サービスが好調なため、転職市場の活況に注目。
- BPOサービスの需要が高まっているため、アウトソーシングの活用を検討する価値あり。
- 求人媒体企業の成長
- クイックやキャリアデザインセンターのように、求人メディアが過去最高の業績を記録しているため、求人広告の出稿を強化するタイミング。
- エンジャパンやi-plugの新規事業への投資が進んでいるため、採用支援ツールや新しい転職サービスの利用を検討。
- 人材派遣サービス企業の動向
- 技術者派遣や事務派遣が好調なため、特定スキルを持つ人材の派遣活用を検討。
- nmsホールディングスのように、製造業の派遣が回復しているため、製造業界での採用ニーズの高まりに注意。
求職者向け情報
- 採用市場の活況
- リクルートホールディングスの国内市場の堅調な回復から、求人広告や人材紹介サービスを積極的に活用することが有利。
- パーソルホールディングスの転職市場の活況に注目し、転職を考えている人は「doda」などのサービスを活用。
- 新しい求人メディアの利用
- クイックやキャリアデザインセンターなどの求人メディアが好調なため、これらのメディアを利用して求職活動を行うと効率的。
- 新規事業や新しい転職サービス（例：i-plugの「PaceBox」）に注目し、適切なタイミングで利用することがキャリアアップに繋がる可能性が高い。
- 人材派遣の活用
- 技術者派遣や事務派遣、クリエイティブ関連派遣が好調なため、専門スキルを持つ人は派遣サービスを活用して就職機会を広げる。
- 製造業の派遣が回復しているため、製造業界での就職を考えている人は派遣サービスを積極的に利用する。
- 業界別の求人動向
- サービス業、特にホテルや観光、販売業の求人数が大幅に改善しているため、これらの業界での就職を考えると良いタイミング。
- 医療関連の特需が減少しているが、公務員共済組合の非常勤職員のような安定した雇用機会も存在するため、求人情報を幅広くチェックすることが重要。
これらの情報を基に、採用担当者は効果的な採用戦略を立て、求職者は自身のキャリアアップに繋がる就職活動を行うことができます。
まとめ
2023年度の人材業界は、経済活動の正常化により人材需要が活発化しました。特にサービス業の求人が大幅に改善し、関連企業の売上も好調でした。しかし、コロナ禍での特需が減少した医療関連などでは反動が見られました。今後は需要のある領域への柔軟なシフトが重要となります。次年度の動向も引き続き注目されます。
このように、2023年度の人材業界は多様な変化を見せました。各企業の戦略と市場の動向に注目しながら、今後の展開を見守りたいと思います。
